消費税と損益計算書の利益との関係について
消費税は「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて計算する、とよく言われています。
そして「預かった消費税」は主に売上から発生します。また、「支払った消費税」は仕入や経費から発生します。
ということは、損益計算書上の利益に、消費税率をかければ簡単に消費税のおおまかな計算ができるのでは?
正解は×です。
理由としては主に2点
まずは、費用として計上できるタイミングの違いです。
例えば売上原価と当期仕入額です。
損益計算書上、売上原価は、実際に売れた分にかかった仕入額を計上します。
一方で、消費税の計算上は、当期の仕入額にかかった消費税額を計算します。
また、減価償却費もこれにあたります。
例えば100万の設備を購入した場合、損益計算にあたっては、(5年償却の場合)年20万円ずつ5年間にわたって計上します。
しかし、消費税では、支払をしたタイミングで100万円×10%の消費税を「支払った消費税」として計算に含めるのです。
次、2点目の理由です。
仕入と売上原価よりも、こちらの理由の方が金額的影響額は大きいかと思います。
損益計算書上、事業に要した費用はすべて計上することができます。しかし、消費税の計算にあたっては、課税の対象となる取引が明確に定められており、課税対象外の取引は消費税の計算上含めることができないのです。
代表的なものが人件費です。
人件費(給与や役員給与)は、当期発生額を損益計算に計上します。しかし、消費税の計算上、こちらは不課税取引となり、計算に含めることができません。すなわち、控除することができません。
これは減価償却費のようにタイミングの話ではありません。永久に計算に含めることができないのです。
では、課税の対象となる取引は一体どういうものなのか?
それには4つの要件があります。
- 国内において行われるものであること
- 事業者が事業として行うものであること
- 対価を得て行うものであること
- 資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供であること
人件費は、「事業者が事業として行う」に該当しないため、課税の対象外(不課税取引といいます)とされているのです。
さて、この4要件を満たせば、課税の対象なる取引なるのか?
いえいえ、課税の対象となった取引のうち、税の性格上課税することになじまない取引や、社会政策的な配慮に基づいて、計算に含めることができない取引が15項目にわたって定められています。(非課税取引といいます)
例えば土地の譲渡や貸付。
土地はなくなりません。「消費」という性格になじまないので、非課税とされます。
また、医療費や、火葬料、また、身体障碍者用の物品については、こちらは政策上の配慮から非課税とされました。
さてさて、では、課税の対象のうち、非課税取引を除けばすべて消費税の枠内に入れていいのか?
OKです。ただし、輸出取引は0%で計算する必要があります。
ということは、実質、輸出以外の課税取引について、消費税を計算する必要があるのです。
非課税、不課税については、通達等で事細かに定められています。
よくよく確認することが必要です。
消費税、全体像
消費税についてです。
消費税の計算方法についてざっと見ていきます。
主なものについて、計算の順序は以下のとおりです。
消費税は、よく、「預かった消費税から支払った消費税を引いて、納税する」と言われます。
ここでいう「預かった消費税」というのが、「売上に対する消費税」であり、「支払った消費税」というのが、「仕入や経費に対する消費税」ということです。
この計算順序は、要は、
1で納税義務の判定をし(納税義務がないならば、これ以降の計算をする必要がありません)、納税義務があるならば、
2の課税標準に対する消費税額で、「預かった消費税」を算定し、
3及び4で「支払った消費税」を算定、
5で「預かった消費税」から「支払った消費税」を控除し、当事業年度での要納税額を算定、
6で、5から中間納付額を控除し、当期末に納付すべき額を計算する
ということです。
それでは順番に見ていきます。
1、納税義務の判定
そもそも消費税を払う義務があるのかどうか、判定を行います。
消費税は法人ならば事業年度、個人でしたらその年の1月から12月までを消費税の計算の期間としますが、その事業年度の前前事業年度、つまり、二年前の事業年度の課税売上高が1000万未満でしたら消費税の納税が免除されます。
ここでいう課税売上高とは、課税取引と免税取引の合計を言い、税抜ベースで判定します。
2、課税標準に対する消費税額
前述のとおり、主に売上に対する消費税額です。ただ、消費税は取引ごとに課税される取引か否かを判定していきます。車や工場設備等の売却があれば、それも課税取引となるので、その売却額も「預かった消費税」として納税の対象となります。
計算は課税標準を計算し(1000円未満切り捨て)、税率を乗じて算定します。
3、課税売上割合
ここからは「支払った消費税」の計算です。消費税の納税額の計算において、「預かった消費税」は売上等に対して全額を納税する必要がありますが、「支払った消費税」については、「預かった消費税」に関連する分しか控除することができません。(例外あり)
「支払った消費税」全額のうち、どれだけ控除できるか、その割合が、課税売上割合ということです。
計算は、「課税売上」/「課税売上」+「非課税売上」で算定します。
ざっくりですが、「預かった消費税」の算定基礎となる売上/売上全額というイメージです。
4、控除対象消費税額
3で計算した課税売上割合を使って、「控除できる」「支払った消費税額」の算定をしていきます。
まず、支払った消費税額のもととなる、仕入や経費支払額を集計します。
その際に、
①課税売上のみに要する支払
②非課税売上のみに要する支払い
③課税売上、非課税売上両方に共通して要する支払い
に区分して集計します。
控除したら、
- ①~③の合計額×課税売上割合で算定(一括比例配分方式)
- ①の全額+③×課税売上割合で算定(個別対応方式)
のどちらかによって「支払った消費税」を計算します。これは有利な方を利用できます。(金額が大きい方が有利です)
なお、課税課税売上割合が95%以上かつ、課税売上が5億円超の場合は「支払った消費税」の全額控除が認められています。(前述の「例外」がこれです)
5、差引税額
前述のとおり、「預かった消費税」から「支払った消費税」を控除し、当事業年度での納税額全額を算定します。
6、納付税額
消費税でも、法人税や所得税と同じく中間納付の制度があります。
5から中間納付額を控除し、当期末に納付すべき額を計算します。
以上が消費税の大枠です。大枠です。
実際は、例えば売上の返還や貸倒があればその調整もしますし、固定資産の利用目的が非課税売上から課税売上に変わればその調整もします。
また、取引自体も、不課税、非課税、免税、課税とわかれますし、それが仕入側か売上側かによって、消費税の計算に違いもでてきます。
ご注意を。
教育資金贈与信託
教育資金贈与信託についてです。
贈与とは、個人が個人から財産をもらった時にかかる税金です。
ちなみに、法人からもらっても贈与税はかかりませんが、所得税がかかります。
ただし、非課税枠があり、それが110万円になります。
よく言われる年110万円までなら贈与しても贈与税はかからない、というものです。
ただ、110万円を超えて無税で贈与できる方法がいくつかあります。
もちろん合法です。(これを節税という、脱税ではありません)
教育資金贈与信託はその一つです。
簡単にいうと、祖父母から孫へ「無税で」一人1500万まで贈与できる、というものです。
ただし条件があります。
- 「教育資金」贈与信託という名前のとおり、贈与した金銭の使い道は教育資金に限ること。
- 契約時点で、子供は30歳未満であること。
補足します。
1、について、教育資金には2通りあります。
簡単にいうと、支払先が学校か学校以外か、ということです。
このうち、学校以外の贈与に関しては、500万までしか無税の対象にならないので、注意が必要です。
学校と学校以外併せて1500万、そのうち学校以外は500万までが非課税、ということです。
2、について、子供は30歳になると自動的に終了するのではありません。あくまで教育資金の一括贈与を受けた時点で30歳であればOKです。そして、40歳になると自動的に教育資金口座にかかる契約は終了します。
契約終了時に口座に残高が残っていた場合、贈与税の対象となってしまいます。
計画的に、使い切れる額を贈与する必要がありますね。
契約終了に関していうと祖父母が死亡した場合も契約終了となります。
その場合口座に残っていた残高は相続税の対象となります。孫が23歳以上の場合は、その孫が相続により口座残高を取得したものとみなされてしまう上に、相続税は2割加算の対象となってしまいます(R3年4月以降の贈与契約の場合)
祖父母の年齢も考えて贈与契約をする必要がありますね。
次に、具体的な方法は以下のとおりです。
1、金融機関(銀行、信託銀行等)に教育資金口座を開設し、祖父母は口座に資金を預ける。
2、教育資金の支払を行った場合(学校、塾への支払い)があった場合には、その金融機関に領収書を提出し、口座から同額の払い出しを受ける。
補足します。
まず、1についてですが、金融機関ごとに管理手数料等の諸費用が異なります。
ざっと調べたところ、
三井住友銀行、UFJ信託銀行、りそな銀行は管理報酬が1契約あたり2万から11万でした。
2について、領収書やレシートの提出は支払いから1年以内にしなければなりません。
銀行によって郵送や来店が必要なところもありますが、最近はアプリによる提出も増えてきています。便利ですね。
なお、これは暦年贈与(年110万円の非課税)と併用できます。
なので、相続税対策の一環として計画的に利用していくとよいと思います。
以上、ざっと、教育資金贈与信託について説明しました。
これは制度のあらましを理解するために記載したものなので、
詳細については国税庁のHPなどでご確認くださいませ。